ジェネレーティブ音楽入門 - 次の音を決めるルールを聴き比べる
ユークリッド、Markov、Turing、模様や物体の動きが、次の音とリズムをどう決めるのかを説明し、試すツールを選びます。

ジェネレーティブ音楽では、すべての音を直接置く代わりに、音が生まれる規則を作ります。ここでは、リズムを均等に散らす、前の音から次を選ぶ、短い反復を少しずつ変える、模様や物体の動きを読む、という違いからツールを選びます。
次の音を何が決めるか
ジェネレーティブ音楽では、人がすべてのノートを置く代わりに、規則、確率、図形、物体の動きなどが次の音を決めます。同じ「自動生成」でも、何を操作できるかはツールごとに違います。
まず「整ったリズムが欲しい」「予想外のメロディが欲しい」「動く画面を演奏したい」のどれに近いかを決めてください。仕組みの名前は、その後で十分です。
音をなるべく均等に散らす — ユークリッドリズム
通常のステップシーケンサーは、人が選んだマスで音を鳴らします。ユークリッドリズムは、1周のマス数(Steps)と発音数(Hits)を決めると、発音どうしの間隔がなるべく均等になるように配置します。
たとえば8 Stepsに3 Hitsを置くと、間隔は3・3・2のように分かれます。完全な等間隔にはできなくても、偏りが最小になるよう余りを配る考え方です。音楽では、少ない打点を一周へ散らし、規則性を保ったまま穴のあるリズムを作れます。Rotationは間隔を変えず、どの打点を拍頭にするかだけを動かします。
前の音を手がかりに次を選ぶ — Markov
単純な発音確率は、各ステップで「鳴る・鳴らない」を抽選します。Markovは、現在の音ごとに次の候補と確率を持ちます。Cの後はEへ進みやすい、Gの後はCへ戻りやすい、というように、偶然の中へフレーズの傾向を作れます。
遷移確率を変えると、その音から先の流れが変わります。すべての音を直接並べるのではなく、「この音の次に何が起こりやすいか」を編集する仕組みです。
短い反復を少しずつ変える — Turing
Turingシーケンサーは、0と1の短い列を輪のように繰り返し、その値を音程やGateへ読み替えます。Mutationが0なら同じ列が循環し、少し上げると、ときどき1つのBitが反転して別の反復へ移ります。
変化率を上げるほど新しい並びは生まれやすくなりますが、元の反復も失われやすくなります。決まったループと完全なランダムの間を作れるのが、この方式の面白さです。
近くの状態から次の模様を作る — Cellular AutomatonとL-System
画面上の規則が世代ごとに育つ様子を見たいなら、Cellular AutomatonやL-Systemが向きます。前者は近くのセルを見て次の模様を作り、後者は記号を書き換えて長い構造を作ります。
どちらも、同じ初期状態と規則なら同じ世代をたどります。セルの位置や密度、記号の並びを音程や発音へ割り当てるため、規則が形を変える過程をそのままフレーズとして聞けます。
数値や図形の位置を音に読む — Chaos、Fractal、Lissajous
数値や図形の変化を音として聞きたいなら、Chaos、Fractal、Lissajousを試します。画面の位置や計算結果が、音の高さ、強さ、左右などへ結び付きます。
見た目が複雑でも、最初はPitchだけを有効にし、「画面の上へ行くと音も高くなる」のように1つの対応だけを確認します。
物体の出来事を発音にする — Gravity、Swarm、Pendulum、Collision、Orbit
物体や生き物のような動きを眺めながら演奏したいなら、物理・群れ系が向きます。Collisionは衝突、Pendulumは振り子の通過、Orbitは軌道上のGateなどが発音のきっかけになります。
Swarmは群れの位置や速さ、Gravityは音の候補に引力や斥力を加えます。最初は個体や物体を少なくし、何が鳴ったのか見える状態で試します。
音の決まり方だけを聴き比べる
複数のツールを比べるときは、Scale、BPM、音色、音量を近い状態にし、生成規則だけを変えます。比較する長さは、各方式の反復や変化が一度は見えるところまで。短い周期と長い周期を同じ秒数で切る必要はありません。
ランダムな選択を使うツールでは、設定保存の中にSeedも含まれます。ただし、開始位置や操作順まで同じでなければ結果が変わる場合があります。あとで編集する設定と、その場で聞こえたWAVの両方を残すと比較をやり直せます。
最初に試すツールを選ぶ
初めての1本なら、結果を直しやすいステップシーケンサーか、衝突が分かりやすいCollisionがおすすめです。整ったリズムならEuclidean、ゆっくり変わる反復ならTuring、動く映像ならPendulumやSwarmが選びやすい入口です。
ツールを選ぶ基準は「高度そうか」ではなく、どの操作が音を変えたか理解できることです。ひとつの規則を動かし、気に入った変化を保存できれば、そこから制作を続けられます。
演奏を手掛かりにルールを作る
マルコフシーケンサーでは、単旋律のMIDIや短い手弾きから、音の移り方に加えて発音間隔・長さ・強弱も学習できます。解析結果を試聴してから採用し、LEARN STRENGTHで反映量を調整します。曲の録音をまねる機能ではなく、演奏から得たルールで次の音を選ぶ機能です。
ユークリッドリズムでは、別トラックの発音を条件にできます。キックと重なるスネアを休ませる、別の音のあとへ一打足すなど、均等配置を土台にトラック同士の関係を作れます。まず条件を一つだけ追加し、条件なしのリズムと比べてください。
要点
ユークリッドは打点を均等に散らし、Markovは前の音から次を選び、Turingは反復を少しずつ変えます。理論名だけで選ばず、どの値が音程・発音・リズムへ変わるのかを見てください。