サウンドラボ10 分で読めます公開: 2026-09-01更新: 2026-09-01執筆・検証:甘党工藤

巨大なモジュラーパッチを読み解く - SIGNAL FLOWからMacro演奏へ

NEW SYSTEM JAMをPatch Browserで選び、SIGNAL FLOWとNavigatorで経路を読み、A/B、Performance Macro、MIDI Learnで演奏するまでを解説します。

巨大なモジュラーパッチを読み解く - SIGNAL FLOWからMacro演奏へ

大規模なモジュラーパッチでは、変化がどこを通って音になったかが見えにくくなります。NEW SYSTEM JAMを題材に、完成済みパッチを選ぶ、読む、比較する、演奏する順番を身につけます。

まずはNEW SYSTEM JAMを全景のまま聴く

FACTORY PATCHESでNEW SYSTEM JAMを読み込み、PLAYを押します。Clock、Euclidean、Sequencer、Gate Probability、複数の音源、加工系、NAMAZU、MASTER OUTを含む総合パッチです。最初の30秒はノブを触らず、PLUCKとDRUMの出番、持続音と短い打音が同じ空間系へ合流する様子、PLAY中に残る余韻を聴きます。

観察後に分解します。最初から複数のノブを動かすと、どの変更が結果を作ったか分からなくなります。まず再生前の全体像をSnapshot AへSAVEし、その後は一つの信号種類か一つのパラメータだけを対象にします。

Patch Browserで調べたい構造から選ぶ

FULL SYSTEMカテゴリでNEW SYSTEM JAMを選び、検索欄、難易度、モジュール数、ケーブル数、お気に入りが見えるPatch Browser
Patch Browserは名前だけでなく、学びたい構造、規模、難易度から完成パッチを絞り込めます。

検索欄はパッチ名だけでなく説明と使用モジュールも対象にします。filter、drum、NAMAZUのように、聞きたい音や学びたい構造から探せます。LEARN、BEAT、MELODY、DRONE、EXPERIMENT、NAMAZU、FULL SYSTEMのカテゴリを検索語と組み合わせます。

各カードには難易度、モジュール数、ケーブル数が出ます。短時間の学習ならBEGINNER、複数経路の観察ならINTERMEDIATE、総合演奏ならADVANCEDを目安にします。星はFAVORITES、RECENTは直近の履歴です。「おまかせで鳴らす」は現在の絞り込み内から選ぶため、DRONEだけ、NAMAZU使用例だけという偶然探索もできます。

SIGNAL FLOWは経路と全体の勢いを分けて読む

SIGNAL FLOWでケーブルを選び、音源からMASTER OUTまでの上流と下流だけを明るく表示したモジュラーラック
一本を選ぶと、その上流と下流を含む経路が浮かびます。光量は枝別メーターではなくMASTER連動です。

SIGNAL FLOWを有効にすると、Audio、CV、Gateのケーブルへ流れが重なります。PLAY中かつMOTION ONなら動き、STOP中またはMOTION OFFなら静止します。端末の視覚効果を減らす設定も尊重されるため、動かなくても経路表示とフォーカスは利用できます。

重要なのは、光の強さが枝ごとの電圧ではなく、MASTER出力レベルによる全体可視化だという点です。光だけで一本のケーブルを無音と断定せず、接続を外す、パラメータを一つ動かす、SCOPEやLEVEL METERを途中へ置く方法で耳と計器を合わせて確認します。

ケーブルまたはLIVE CABLESの経路ボタンを選ぶと、その一本、その上流、その下流を残して他を暗くします。まずMASTER OUT直前のAudioを選び、音源まで戻ります。次にPLUCKのTRIGへ入るGateを追い、最後にSequencerのPITCHから音源へ向かうCVを確認します。Audio、Gate、CVを一度に追わず、役割ごとに三周するのがコツです。

NAVIGATORとUI倍率で迷子にならない

NAVIGATORでLADDERを検索し、ラック内の対象モジュールと現在の表示範囲を確認している画面
検索、ジャンプ、表示範囲の確認を一か所で行い、RACK ZOOMとUI倍率を目的別に調整します。

NAVIGATORの枠は現在の表示範囲、色付きの短冊は各モジュールです。地図を押すとその場所へ移動し、短冊を押すかキーボードで選ぶと対象を中央へ寄せます。MODULE SEARCHにLADDERやREVERBと入れると一致するモジュールが強調されます。

検索で目的地へ移動し、SIGNAL FLOWで前後を確認し、次の調整先へ進みます。文字やノブが小さければUI 115%、さらに必要なら130%を選びます。UI倍率は文字と操作部、RACK ZOOMはラック全体の倍率です。コンパクト表示では端子とタップ対象を保つため、ラック倍率の最小値は100%になります。

Undo/RedoとA/Bは役割が違う

UNDO/REDOはノブ、移動、接続など直前の編集を時間順に戻す機能です。Snapshot A/Bはパッチ全体の状態を二つ保存し、何度も比較する機能です。実験前をAへSAVEし、変更後をBへSAVEして、同じフレーズを交互に聴きます。AまたはBの呼び戻し自体もUNDOできます。

A/Bは比較地点であって長期保存ではありません。試行の途中を二つ並べるならA/B、連続操作を一つずつ戻すならUNDO、別ブラウザや別端末へ持ち運ぶならJSON、作品として残すならPOCKET SAVEと使い分けます。

4本のMacroでNEW SYSTEM JAMを演奏する

NEW SYSTEM JAMのLADDER CUTOFF、REVERB MIX、COMB FEEDBACK、WIDENER WIDTHをPerformance Macroへ集め、XY MORPHとMIDI Learnを表示した画面
探索用の巨大ラックから、演奏に必要な4操作だけをPerformance Macroへ集約します。

各数値パラメータの「+ MACRO」で、演奏用操作を最大8個までPERFORMANCE MACROへ集約できます。先頭2個はXY MORPHのXとYになり、一回のドラッグで同時操作できます。最初はLADDER CUTOFF、REVERB MIX、COMB FEEDBACK、WIDENER WIDTHの4本をこの順に追加します。

LADDER CUTOFFは約900Hzから3500Hzへゆっくり開き、高域と輪郭の変化を聴きます。REVERB MIXは0.18前後から0.48前後へ上げ、音像が奥へ広がる様子を聴きます。COMB FEEDBACKは0.25前後から0.60前後までに抑え、金属的な反復と余韻を確認します。WIDENER WIDTHは中央付近から広げ、最後に戻して左右の距離を比較します。

CUTOFFとREVERB MIXを先頭に置き、XY左下を暗く近い状態、右上を明るく遠い状態として練習します。両端をA/BへSAVEして8小節ごとに比較し、次はXとYを別々に動かします。Feedbackは急に大きなピークを作ることがあるため、MASTERを下げた状態から範囲を確認します。

MIDI Learnで物理ノブへ割り当てる

対象MacroのMIDI LEARNを押してから、割り当てたい物理ノブを動かします。MIDI CC番号が表示されたら完了です。同じControl Change番号を別のMacroへ割り当てた場合は新しい方へ移り、1本の物理ノブが意図せず複数のMacroを動かす状態を避けます。

Web MIDIの対応状況と許可画面はブラウザ、OS、接続機器によって異なります。Learnが進まない場合は機器接続、ブラウザ権限、入力ポートを確認し、もう一度MIDI LEARNを押します。非対応環境でも画面ノブとXY MORPHは使えます。本番前に物理ノブを端から端までゆっくり動かし、過大なFeedbackや音量がないか確認します。

スマホではラックを先に、必要な棚だけ開く

狭い画面では下部の「+ MODULES」と「PATCHES / NAV」から必要なドロワーだけを開きます。ドロワーを開いている間は背景操作が止まり、背景を押すかEscapeで閉じられます。先にNAVIGATORで目的地へ移動し、閉じてからラックを操作すると表示範囲を広く保てます。

端子を選ぶとPATCH ASSISTが互換端子を一覧化します。OUTなら未接続の同種IN、接続済みINなら切断元を近い順に示します。ラックの空白は一本指でパン、二本指でピンチズームします。モジュール上ではノブや端子の操作が優先されるため、移動は空白から始めます。

音が出ない、変化が分からないときの切り分け

完全に無音ならPLAY、端末音量、MASTER、音源からMASTER OUTまでのAudio経路を確認します。持続音源だけの構成ではClockがなくても鳴る場合がありますが、PluckやDrumはTRIGまたはGateが必要です。一部だけ鳴らない場合は対象音源のTRIGをフォーカスし、Gate ProbabilityやEuclideanの休符も考えて数小節待ちます。

SIGNAL FLOWの光が弱くても、枝単位の無音とは限りません。接続、SCOPE、LEVEL METER、実音で確認します。動かない場合はPLAY、MOTION、端末の視覚効果設定を確認します。違いが小さいときはCUTOFFやMIXを一つだけ大きく動かし、A/Bで比較します。戻しすぎた場合はREDOを使います。

保存とプライバシーの範囲を知る

プロジェクト、表示設定、A/B、Patchのお気に入り・履歴、MacroとMIDI CCの割り当てはブラウザ内へ保存されます。別ブラウザや別端末へ自動同期されず、閲覧データの削除やプライベートブラウズの終了で消える場合があります。共有端末ではA/BやRECENTが残る可能性にも注意します。

残したいパッチはJSON EXPORTまたはなまずポシェットへ保存します。JSONとポシェットのProjectは再編集する構成、RECORDとポシェットの音声は聞こえた演奏結果です。比較用のA/Bだけに作品を置かず、目的に応じて構成と録音の両方を残します。

要点

Patch Browserで目的に合う構成を選び、SIGNAL FLOWで一本の上流・下流を追い、NAVIGATORで移動し、A/Bで判断します。最後に演奏に必要な操作だけをPerformance Macroへ集め、まずCUTOFFとREVERB MIXの2本で8小節の変化を作ります。

この状態はこのブラウザだけに保存されます。